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銀三たちの今日の朝食は野ウサギだった。 山の中からかん高い声で獲物を追っている声が
聞こえたあと、犬同士の争いの声に変わった。 急いで行ってみると、朝吉が体長30cmくらい の茶色とグレーが混じった兎を夢中で食べていた。 いつの間にか子供の朝吉が、リーダーにのし上がったのかと思ったが、たぶん親が譲った のだろう。 バリバリと骨をかみ砕く音と共に、恍惚とした表情を浮かべている。 この世の喜びと、幸せを同時に噛みしめているかようにも見えた。 朝吉の独り占めにするわけにもいかず、小春と銀三にも平等になるように分け与えた。 見慣れた光景ではあるが、やはり非情で残酷だ。 飼い犬とはいえ自然界の野生動物であり、顎力は驚異的である。 (これからは怒らせないように気を遣い、尊重し、慎重に接しよう・・・と決めた) すっかり食べつくしたあとは、胃袋は真上からみると横に膨れ、帰り道は満足そうに ゆっくりと余韻を味わうように歩いていた。 |