photographer Shinji Nishimura web site
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10日くらい前になるが、近くの通行止めになっている山道で、飼い犬たちを走らせた。
後ろ姿が見えなくなり、わき道にそれたと思ったら、いきなり車の前方を丸々とした
イノシシが走り抜けて行った。 そのあとを銀三達が追いかけて行き、そしてそのまま
居なくなってしまった。 しばらくすると銀三が戻り、一緒に何度も山道を往復して探したが、
何も反応がない。 小春はよくあることだが、朝吉はめずらしく、心配になってきた。

まわりはだんだんと暗くなり、霧も出始め、シンと静まり返っている。 
雨が降りだし、先に帰っていると思い帰宅したら、小春だけがしっぽを振って待っていた。 
再度銀三を連れて、山へ探しに向かったが、真っ暗な闇から何も返事がなかった。 
イノシシに襲われたか、罠にかかったか、谷底に落ちて動けなくなったか・・・
最悪の事ばかりを考えてしまう。

パソコンの背景写真の朝吉を見るのも、わずか2歳3カ月の生涯だったと思うと、
胸が張り裂けそうに辛い。 妻は前日から、実家へ帰り、一人で思い悩むのは
負担が大きい。 自分にとっての試練なのか・・・。 海や山で遭難した身内の帰りを待つ、 
家族の重い気持が、少しは分かったような気がした。

雨は本降りになり、悶々とした時間が過ぎるなか、突然遠吠えが聞こえ、
急いで外に出ると、びしょ濡れになって戻ってきた朝吉がいた。 
「生きていた!」 大げさだが、地獄から天国へイリュージョンのように、
瞬間移動したようだった。 どこで何をし、腹をすかせてどのように暗闇をさまよい
帰ってきたのか。 夜の10時を過ぎていた。 
必死でたどり着いた甘えん坊の朝吉を抱きしめた。 愛おしかった・・・

当たり前のように思って過ごしていた生活は、当たり前ではなく、日々平穏無事
である事が、どれほど幸せで、ありがたいことか、朝吉に教えてもらった。
それと何事もあきらめが早い性格も、再認識した。