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4月5日の日曜日は、村の神社で今年最初の御籠り(おこもり)があった。
田植えの前、農産物の豊作や疫病防除を祈願する行事である。 正午から始まり、神事が終わったあと、区長をはじめ役員、参詣した氏子たちは それぞれ持参した重箱入りのご馳走と、お供えの御神酒を境内でいただく。 街中だと「オープンテラスでランチ、それにアペリティフ付き」ということになる。 各隣組にわかれて、酒を酌み交わし、近況の報告や情報の交換など、 今の世の中にとって、ますます重要なコミュニケーションの場である。 役員の仕事は、準備や後片付けなど多用だが、多くの人たちに参加してもらい、 ゆったりとした休日の午後、酒を呑んで過ごせる事に、喜びと集落のよさを思う。 数十年前は、男の子たちの相撲大会もあり、賞品に鉛筆などをもらっていたが、 女の子にとってはそれが不公平で、自分たちも「まわし」をしめ、土俵に上がったそうだ。 ほほえましくも、頑強で図太い精神! いつの時代も弱肉強食である・・・。 |
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銀三たちの今日の朝食は野ウサギだった。 山の中からかん高い声で獲物を追っている声が
聞こえたあと、犬同士の争いの声に変わった。 急いで行ってみると、朝吉が体長30cmくらい の茶色とグレーが混じった兎を夢中で食べていた。 いつの間にか子供の朝吉が、リーダーにのし上がったのかと思ったが、たぶん親が譲った のだろう。 バリバリと骨をかみ砕く音と共に、恍惚とした表情を浮かべている。 この世の喜びと、幸せを同時に噛みしめているかようにも見えた。 朝吉の独り占めにするわけにもいかず、小春と銀三にも平等になるように分け与えた。 見慣れた光景ではあるが、やはり非情で残酷だ。 飼い犬とはいえ自然界の野生動物であり、顎力は驚異的である。 (これからは怒らせないように気を遣い、尊重し、慎重に接しよう・・・と決めた) すっかり食べつくしたあとは、胃袋は真上からみると横に膨れ、帰り道は満足そうに ゆっくりと余韻を味わうように歩いていた。 |
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今朝はショックだった。 いつもより山の奥へ散歩に行ったら、案の定、小春はウサギを追って行方不明になる。
朝吉と銀三はしばらくして戻って来たので一緒に帰り、玄関近くのテーブルで朝食をとろうと思っていたら、 小春がいつものように申し訳なさそうに帰ってきた。 目の部分に何か付いていたのでよく見ると、枝木のような木片が右目の中に刺さっていた。 まずいことになったとかなり動揺したが、病院はまだ開いていないし、とりあえず食事をと思ったが、 食欲もなく何ともいえない重苦しい空気だけが漂っていた。 かわりに辛い心の痛みを充分にあじわった。 急いで病院へ行き、お世話になっているT先生に、診察していただく。 鎮静と麻酔の注射を打ったあと、 治療中に「よし!」と先生の力強い声が聞こえ、順調に進んでいる様子がうかがえた。 幸い眼球には刺さってないことがわかり、失明の心配は消え、安堵と喜びの思いでいっぱいになる。 なすすべもなく、すがる思いで行った医者の冷静かつ的確な判断と治療、寛容な精神に心より尊敬と感謝である。 |
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